言われたら、どこへ行く?
パワハラの3つの要素、会社が講じる措置、社内外の相談先。セクハラ・カスハラの位置づけも。
パワハラって、どこからが当てはまる?
パワハラには、厚生労働省の指針で決まった3つの要素があります。3つをすべて満たすものが、指針でいうパワハラです。
- 職場のパワハラは、優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、就業環境が害されるもの、の3つをすべて満たすもの。
- 客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラに該当しない。
- 厚労省の典型例の整理は網羅するものではない。
先に結論
厚生労働省の指針では、職場のパワーハラスメントは、次の3つの要素をすべて満たすものとされています(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号)。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されるものであること
「職場」は、労働者が業務を遂行する場所を指します。通常の就業場所以外でも、業務を遂行する場所であれば含まれます。「労働者」は正社員だけでなく、パートや契約社員などの非正規の人も含みます。
3つの要素は、ひとつの言動について、それぞれ別々に確かめる読み方になります。どの要素に当たる事実があるのかを、順に整理してみてください。
適正な指導は、対象にならない
指針は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラに該当しないとしています。厳しく注意されたことと、範囲を超えた言動とは、別のものとして考える枠組みです。
厚生労働省は、典型的な言動を6つの類型に整理しています。ただし、これは典型例の整理であり、すべてを網羅するものではありません。類型は、判断の手がかりとして読んでください。
この本では、当てはめをしない
この本は、ある言動がパワハラに当たるかどうかを判定しません。自分の状況を整理するときに、3つの要素を順に確かめる枠として使ってください。
- 言動は、職場(業務を行う場所)で行われたか
- 3つの要素それぞれについて、事実を書き出せるか
- 就業規則や社内の方針に、ハラスメントの定義と禁止が書かれているか
ここでは、仕組みを説明しています。法律の助言ではありません。民法上の損害賠償や刑法上の責任は、別の話になるため、ここでは扱っていません。判断に迷うときは、社内の相談窓口や、厚生労働省・都道府県労働局の案内で確かめてください。
会社は、何をしなければならない?
パワハラを防ぐための措置は、会社の努力目標ではなく、法律上の義務です。何を決め、何を整えるのかを並べます。
- 事業主は、職場のパワハラで就業環境が害されないよう、相談に応じ適切に対応する体制の整備など、雇用管理上の措置を講じなければならない。
- 指針は措置を、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止、の柱で整理している。
- 相談したことなどを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止。令和8年10月1日からは、カスハラ等の防止措置も義務になった。
先に結論
労働施策総合推進法では、事業主は、職場の優越的な関係を背景とした言動によって労働者の就業環境が害されないよう、相談に応じ適切に対応するための体制の整備などの雇用管理上の措置を講じなければならないとされています。
この義務は、大企業では2020年(令和2年)6月1日から、中小企業では2022年(令和4年)4月1日から適用されています。
指針が示す4つの柱
厚生労働省の指針は、措置の内容を次の4つにまとめています。社内で決め、社員に知らせておく内容です。
- 方針の明確化と周知・啓発。ハラスメントの内容と、厳正に対処する方針や対処の内容を規定し、周知する
- 相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする
- 事実関係の迅速かつ正確な確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止の措置
- プライバシーを守る措置とその周知。相談したことなどを理由に不利益に扱わないことを定め、周知・啓発する
相談したことを理由にした不利益取扱いは禁止
会社は、労働者が相談したことや、相談対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません。
労働者にも、他の労働者への言動に注意し、会社の措置に協力するよう努める役割があります。これは努力義務として定められています。
義務に従わないときの仕組み
厚生労働大臣は、事業主に対して助言・指導・勧告を行えます。措置義務に違反している事業主が勧告に従わないときは、その旨を公表できるとされています。
ほかのハラスメントも、同じように義務
セクシュアルハラスメントとマタニティハラスメントは男女雇用機会均等法、育児・介護休業に関するハラスメントは育児・介護休業法で、事業主に雇用管理上の措置が義務づけられています。
令和7年(2025年)の改正法で、カスタマーハラスメントと、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も事業主の義務になりました。施行日は令和8年(2026年)10月1日です。
- 社内にハラスメントの方針があり、社員が見られる場所に掲示・配布されているか
- 相談窓口が決まっていて、誰に・どう連絡するかが分かるか
- 相談したことで不利益に扱わないと、明示されているか
- 相談するとき、いつ・どこで・何があったかを、メモなどで整理できているか
措置義務は、事業主に課されたものです。ハラスメントをした個人を直接処罰する規定については、この本では確認していません。勧告や公表は「できる」とされている仕組みです。会社の具体的な対応は、就業規則や社内の規程、都道府県労働局の案内で確かめてください。
相談できるのは、どこ?
まず社内、対応されなければ都道府県労働局、という順に案内されています。国の窓口と、紛争解決の仕組みを、できることだけ書きます。
- 厚労省は、まず社内の人事労務の相談担当者や信頼できる上司へ、対応されないときは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ、と案内している。
- 総合労働相談コーナーは、匿名でも相談でき、プライバシーは守られ、相談は無料。
- 都道府県労働局長による援助(助言・指導・勧告)と、紛争調整委員会の調停の仕組みがある。
先に結論
厚生労働省は、まず会社の人事労務の相談担当者や、信頼できる上司に相談するよう案内しています。対応されないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談する流れが示されています。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、匿名でも相談できます。プライバシーは守られ、相談は無料です。予約は不要です。労働局や労働基準監督署の中にあります。土日祝日と、12月29日から1月3日までは閉庁です(厚労省ページの記載)。
労働局による援助と調停
紛争の当事者の双方または一方から求められたとき、都道府県労働局長は、必要な助言・指導・勧告を行えます。申請があり必要と認めるときは、紛争調整委員会に調停を行わせることもできます。
いずれについても、援助や調停を求めたことを理由に、事業主が解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています。
ここでは、窓口の名前と役割を説明しています。相談すれば解決する、という意味ではありません。手続きがどう進むか、どれくらいの期間がかかるか、費用がかかるかどうかは、窓口で確かめてください。
相談の前に、整理しておくこと
窓口に伝えるときは、日付、場所、言動の内容、関係者を整理しておくと、状況を説明しやすくなります。
- 社内の窓口(人事・相談担当)の連絡先を知っているか
- 社内で動かないとき、最寄りの労働局の窓口の場所と受付時間を確かめたか
- 相談先に伝える材料(日付・場所・言動・関係者)を、手元に整理したか
窓口の名前は、「労働局」と「労働基準監督署」を混ぜずに使ってください。総合労働相談コーナーは、労働局と労働基準監督署の中にあります。最新の受付時間や所在地は、厚生労働省の一覧ページで確かめてください。
体験談や口コミではなく、法令などの公開情報と一般的な進め方をもとに書いています。サービスの内容は変わることがあるので、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。