それは雇用か、委託か
雇用と業務委託の違い、労働条件通知書で確かめること、フリーランスを守る法律。
雇用と業務委託は、何が違う?
契約書の題名ではなく、働き方の実態で見られる。厚労省が示す見方の枠組みを確かめます。
- 労働基準法の「労働者」かどうかは、指揮監督下で働いているかと、報酬が労働の対価かの2点で見られる。
- 契約の名称にかかわらず、契約内容・働き方・報酬などから個別の事案ごとに総合的に判断される。
- 労働者にあたれば、労働時間や賃金などの労働関係法令の保護の対象になる。
先に結論
雇用か業務委託かは、契約書に書かれた名前だけでは決まりません。厚生労働省は、労働基準法の「労働者」にあたるかを、契約の形式や名称にかかわらず、契約内容・労務を提供する形態・報酬などから、個別の事案ごとに総合的に判断するとしています。
契約書の題名では決まらず、働き方の実態で見られます。
「業務委託契約」と書かれていても、労働者にあたる場合があります。名前は手がかりの一つで、結論ではありません。
何を見て判断するのか
「労働者」にあたるかは、「指揮監督下で労働しているか」と「報酬がその労働の対価として払われているか」の2点で見られます。この2つを合わせて、使用従属性と呼ばれています。
指揮監督下の労働かどうかは、次のような点で見られます。
- 仕事の依頼を断れるか(諾否の自由)
- 業務の進め方について指揮監督を受けているか
- 時間や場所を拘束されているか
- 代わりの人に任せられるか(代替性の有無)
判断が難しいときは、事業者としての面があるか、特定の依頼先への専属性の程度などを、補強の要素として加味します。
上の項目は、公式が挙げている見る点です。当てはまる数を数えて決まるものではありません。
判断の考え方の出どころ
この判断の考え方は、労働基準法研究会の報告(昭和60年12月19日)に示されています。建設業の手間請け従事者などについては、平成8年3月の専門部会報告があります。
この章で示せるのは見る点の枠組みまでです。個別の契約がどちらにあたるかを、この本で決めることはできません。公式の説明でも、個別の事案ごとに総合的に判断されるとされています。
労働者にあたるとどうなるか
労働者にあたる場合は、労働時間や賃金などのルールが適用され、労働関係法令の保護の対象になります。
一方で、業務委託契約を結んでいても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合は、労働基準関係法令が適用され、フリーランス法は適用されないとされています。フリーランス法の仕組みは、この本の別の章で扱います。
迷ったときに確かめること
- 仕事の依頼を断れるか
- 業務のやり方・時間・場所を細かく指示されるか
- 報酬が、働いた時間や労務への対価として払われているか
- 自分で機材を用意するなど、事業者としての面があるか
- 特定の会社の仕事だけをしているか
これらは判断の材料です。一つでも当てはまれば労働者、という決まりはありません。
この説明は、2026年10月14日時点で確認した公式の記載に基づきます。個別の契約についての判断は、窓口や専門家に相談してください。
労働者にあたるかどうか迷うときは、全国の労働基準監督署に設けられた相談窓口を使えます。この窓口は、フリーランス法の施行日(令和6年11月1日)に合わせて設けられました。
この説明は法律の助言ではなく、仕組みの説明です。契約の扱いは、労働基準監督署や、会社の就業規則などで確かめてください。
労働条件通知書で、何を確かめる?
働き始める前に書面で渡される条件を、2024年4月から増えた項目も含めて確かめる。
- 労働基準法15条は、契約するとき使用者が労働条件を明示することを求め、実際と違えば労働者は即時に契約を解除できるとしている。
- 一定の項目は書面の交付が必要で、労働者が希望すればFAXや電子メールなども使える。
- 2024年4月1日から、就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限、無期転換の申込機会などの明示が加わった。
先に結論
働き始めるとき、使用者は賃金や労働時間などの労働条件を明示する義務があります(労働基準法15条)。明示された条件が実際と違う場合、労働者は即時に契約を解除できるとされています。
受け取る書面は、働き始める前に条件を確かめる手がかりになります。
書面で明示される項目
労働基準法施行規則(労基則5条)は、書面の交付で明示する項目を定めています。主な項目は次のとおりです。
- 契約期間
- 有期契約を更新する場合の基準
- 就業の場所と、従事すべき業務
- 始業・終業時刻、休憩、休日など
- 賃金(昇給は書面の対象外)
- 退職に関する事項
このほか、退職手当や臨時の賃金、安全衛生などは、定めがあれば明示することになっています。
書面の様式は自由です。厚生労働省は、モデル労働条件通知書を公開しています。労働者が希望した場合は、書面によらず、FAXや電子メールなどで明示することもできます。
2024年4月から加わった項目
2024年(令和6年)4月1日施行の改正で、明示する項目が加わりました。
- 就業場所・業務の「変更の範囲」(契約締結時と、有期契約の更新時)
- 有期契約の「更新上限」(通算の契約期間または更新回数の上限の有無と内容)
- 無期転換を申し込める旨と、無期転換後の労働条件
今後の見込みを含め、その契約期間中に変わりうる就業場所・業務の範囲を指します。配置転換や在籍型出向は含みますが、臨時の応援・出張・研修などの一時的な変更先は含みません。
限定がない場合は「すべての就業場所・業務」を含める必要があります。テレワークが通常想定されるなら、自宅などの場所も明示します。
更新上限を新設したり短くしたりする場合は、その前に理由の説明が必要とされています。変更の範囲の明示は、2024年4月1日以降に契約を結ぶ・更新する人が対象です。それ以前から契約している人にも、明示を検討するよう勧められています。
有期契約と無期転換
同じ使用者との有期契約が5年を超えて更新された場合、労働者の申込みで無期契約に転換できます(労働契約法18条)。契約期間が1年なら、5回目の更新後の1年間に申込権が発生します。
有期契約の1回の期間は、原則3年が上限です。専門的な知識などを有する労働者と、満60歳以上の人は5年とされています(労働基準法14条1項)。
無期転換の申込みができる更新のたびに、無期転換を申し込める旨と、無期転換後の労働条件を示すことになっています。無期転換後の条件を決めるときは、通常の労働者(正社員など)とのバランスを考慮した事項について説明するよう努めることとされています。
パートや有期の労働者には、労働基準法15条の事項に加えて、昇給・退職手当・賞与の有無や相談窓口などを、文書などで明示する決まりもあります(短時間・有期雇用労働者法)。
受け取ったら確かめること
- 契約期間と、更新の有無・基準(上限があればその内容)が書いてあるか
- 就業場所と業務が、雇い入れ直後と「変更の範囲」の両方で書いてあるか
- 始業・終業時刻、休憩、休日、賃金、退職に関する事項があるか
- 有期なら、無期転換を申し込める時期と、その後の条件が示されているか
受け取った書面は手元に残しておくと、後で比べられます。
書面と実際の条件が違うときは、労働基準監督署などの窓口に相談できます。就職のため転居した人が、解除して14日以内に帰郷する場合は、必要な旅費を使用者が負担するとされています。
この説明は、2026年10月14日時点で確認した内容です。条文の言い回しそのものは確認していません。
この説明は法律の助言ではなく、仕組みの説明です。具体的な契約の扱いは、労働基準監督署や都道府県労働局などの窓口で確かめてください。
フリーランスを守る法律は、何を決めている?
個人で仕事を受ける人に対して、発注する側が守る約束が、2024年11月から法律になった。
- フリーランス・事業者間取引適正化等法は、令和6年11月1日に施行された。発注する側の義務を定めている。
- 発注する側は、委託したら直ちに取引条件を書面か電磁的方法で明示し、受領から60日以内の支払期日までに報酬を払う。
- 1か月以上の委託では7つの禁止行為があり、6か月以上の委託では就業環境の整備の義務もある。
先に結論
フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)は、個人などの事業者が仕事を受けるときに、発注する側が守る約束を定めた法律です。令和5年法律第25号で、令和6年11月1日に施行されました。
発注する側には、取引条件の明示、60日以内の支払い、禁止行為の制限などが定められています。
目的は、取引の適正化と就業環境の整備です。取引の適正化は主に公正取引委員会と中小企業庁が、就業環境の整備は主に厚生労働省(都道府県労働局)が所管しています。
対象になるのは誰か
対象は「特定受託事業者」です。業務委託を受ける相手方で、従業員を使わない個人、または代表者以外に役員がおらず従業員も使わない法人を指します。
「従業員を使用」とは、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うことです。同居の親族だけを雇う場合は、該当しません。
会社勤めの人が、副業として事業で仕事を受ける場合も、特定受託事業者に該当しうるとされています。
対象は、事業者から事業者への委託です。消費者との取引や、単なる商品の販売は対象外です。業種の限定はありません。
「フリーランスなら全員が保護される」という意味ではありません。上の条件に当てはまる委託が対象です。業務委託契約でも、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合は、フリーランス法は適用されないとされています。
取引条件の明示と、支払期日
発注する側は、委託したら直ちに、書面か電磁的方法(メール、SNSのメッセージ、チャットなど)で取引条件を明示します。口頭や電話だけでは認められません。電磁的方法で明示した場合でも、フリーランスから書面を求められたら、遅滞なく書面を交付します。保護に支障がない場合には例外があります。
明示する事項は次のとおりです。
- 双方の名称
- 委託をした日
- 給付の内容
- 受領・提供の期日と場所
- 検査をする場合は、その完了期日
- 報酬の額と支払期日
- 金銭以外で払う場合の方法
報酬の額を具体的に出せないやむを得ない事情があるときは、算定方法で示すこともできます。
報酬の支払期日は、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間で定め、その日までに払う必要があります。支払期日を定めなかった場合は受領した日、60日を超えて定めた場合は受領から60日を経過する日になります。
再委託には、元の委託の支払期日から30日以内とする例外があります。
禁止される7つの行為
フリーランスに1か月以上の業務委託をしている発注事業者(特定業務委託事業者)は、次の行為が禁じられています。
- 受領拒否
- 報酬の減額
- 返品
- 買いたたき
- 購入・利用の強制
- 不当な経済上の利益の提供の要請
- 不当な給付内容の変更・やり直し
フリーランスが了解していても、違反になります。
6か月以上の業務委託では、就業環境の整備も求められます。育児や介護との両立への配慮、中途解除などの事前予告と理由の開示、募集情報の的確な表示、ハラスメント対策の体制整備などです。
違反への対応と相談窓口
違反には、報告の徴収や立入検査、指導・助言、勧告、命令・公表などの仕組みがあります。罰金や過料の仕組みもあります。フリーランスが公正取引委員会などに申し出たことを理由に不利益な取扱いをすることは禁止されています。
違反を申し出る窓口は、公正取引委員会の「フリーランス法の違反申出窓口」です。弁護士による無料相談として「フリーランス・トラブル110番」もあります。
- 仕事を受けたとき、業務内容・報酬の額・支払期日・受領の期日などが、書面かメールなどで届いているか
- 報酬の支払期日が、受領から60日以内の日になっているか(再委託は例外あり)
- 一方的な減額・返品・やり直しを求められていないか
この説明は、2026年10月14日時点で確認した公式の記載に基づきます。罰金や過料の額、運用の状況は確認していません。法改正やガイドラインの更新も確認していません。
困ったときは、公正取引委員会の違反申出窓口、フリーランス・トラブル110番、労働基準監督署の相談窓口などを使えます。
この説明は法律の助言ではなく、仕組みの説明です。具体的な契約については、窓口や専門家に確かめてください。
体験談や口コミではなく、法令などの公開情報と一般的な進め方をもとに書いています。サービスの内容は変わることがあるので、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。