仕組みを調べる仕事の図書館
シリーズ ▾
図書館 / 書架 / 働き方
労災の本

帰り道も、仕事のうち?

業務災害と通勤災害の違い、給付の種類、請求の窓口とパート・アルバイトの扱い。

第1章

業務災害と通勤災害は、何が違う?

仕事中の災害は「業務災害」、通勤中の災害は「通勤災害」と呼ばれ、どちらも労災保険の対象です。

この章の要点
  • 労災保険の保険給付は、業務災害、複数業務要因災害、通勤災害、二次健康診断等給付に関するものの4つに分かれて定められている。
  • 通勤とは、仕事に関係して、住居と就業の場所の間などを合理的な経路と方法で往復することで、業務の性質を持つものを除く。途中で経路を外れたり中断したりすると、その間とその後は原則として通勤にならない。
  • 事業主が提供する専用の交通機関での出退勤や、休日の緊急呼び出しによる出勤中の災害は、通勤災害ではなく業務災害として扱われる。

先に結論

仕事が原因のけがや病気は「業務災害」、住居と仕事場の間の往復などで起きた災害は「通勤災害」と呼ばれます。どちらも労災保険の対象です。

どちらに当たるかは、けがや病気が「業務上」のものか、通勤の経路と方法が決め手になります。ただし、個別の災害がどちらに当たるかを決めるのは、労働基準監督署長です。この本は、その判断の仕組みを説明するものです。

分かれ目は「業務上」かどうか、そして「通勤」にあたるかどうかです。

業務災害とは

業務災害は、業務上の事由による労働者のけが、病気、障害、死亡をいいます。「業務上」とは、業務が原因となったことを指し、業務と傷病などの間に一定の因果関係があることが必要とされています。

厚生労働省のパンフレットは、業務災害と認められない場合として、就業中の私用や勝手な行為が原因となった場合、故意による災害、個人的な恨みによる第三者の暴行、天災地変を挙げています。天災地変については、天災を受けやすい業務の事情があるときは除かれます。

病気の場合は、事業主の支配下にある状態で有害な要因にさらされたことで発症した疾病が、業務上の疾病とされています。就業時間中に発症しても、業務上の理由が認められなければ因果関係は成立しません。

注意

上のパンフレットは作成日が古い版です。ここでは定義と考え方の説明にとどめます。個別の判断は、窓口で確かめてください。

通勤災害とは

通勤とは、仕事に関係して、住居と就業の場所の間などを、合理的な経路と方法で往復することです。業務の性質を持つものは、通勤から除かれます。住居と別の就業の場所を移動する場合や、往復の前後の住居間の移動も含まれます。

通勤の途中で経路を外れたり、途中で止まったりすると、その間と、その後の移動は原則として通勤になりません。ただし、日常生活に必要な行為を、省令で定めるやむを得ない事由により最小限度で行う場合は、外れていた間を除いて通勤として扱われます。

東京労働局の説明では、この例外に当たる行為として、日用品の購入、職業訓練や教育を受けること、選挙権の行使、病院での診察や治療、要介護の家族の継続的な介護などが挙げられています。通勤経路の近くの公衆便所を使うことや、経路上の店で買い物をすることのような、ささいな行為は逸脱や中断に当たらないとされています。

例外の範囲

例外に当たるかどうかは、挙げられている例の範囲でだけ読みます。立ち寄った先が一覧に無いからといって、それだけで決まるものではありません。判断は、労働基準監督署長が行います。

会社の交通機関と、休日の呼び出し

事業主が提供する専用の交通機関で出退勤する途中の災害は、通勤災害ではなく業務災害として扱われます。また、休日に緊急の呼び出しを受けて出勤する途中の災害も、業務災害として扱われます。

同じ移動中のけがでも、どの区分になるかは、誰が用意した交通手段か、どの時点の移動かで変わります。自分の場合はどれに当たるかを、会社の担当や労働基準監督署に確かめてください。

業務災害通勤災害
きっかけ業務上の事由による災害住居と就業の場所の間などの往復中の災害
分かれ目業務との因果関係合理的な経路と方法か、経路の逸脱や中断がないか
  • けがや病気が起きた場所と時間は、仕事中か、通勤中か
  • 通勤の途中で、いつもの経路を外れたり、立ち寄ったりしていないか。立ち寄り先と、その後の経路
  • 会社の送迎バスなど、会社が用意した交通機関を使っていたか
  • 相手がいる事故だったか。届出が要るかどうかは、窓口で確かめる
第2章

労災保険で、どんな給付がもらえる?

給付は治療、休業、障害、介護、遺族などの場面ごとに分かれ、業務災害と通勤災害で名前が違います。

この章の要点
  • 業務災害の保険給付は7種類、通勤災害の保険給付も7種類で、名前が違う。たとえば治療は、業務災害では療養補償給付、通勤災害では療養給付と呼ばれる。
  • 休業補償給付と休業給付は、休業の4日目から、1日につき給付基礎日額の100分の60が支払われる。休業の初日から3日間は待期期間で、業務災害では事業主が休業補償の義務を負う。
  • 請求できる期間は給付ごとに2年か5年で、「行使することができる時から」数える。障害の給付は傷病が治った日の翌日から5年、療養の給付は費用を支払った日ごとに2年などと定められている。

先に結論

労災保険の給付は、業務災害と通勤災害で、それぞれ7種類の名前に分かれています。治療、休業、障害、遺族、介護など、場面ごとに給付が用意されています。

ここでは、どんな給付があるか、休業の扱い、請求の期限を説明します。給付の金額の計算方法や、年金・一時金の額は扱いません。

給付の名前は業務災害と通勤災害で違い、請求の期限は給付の種類と日付で決まります。

給付の名前を比べる

業務災害の給付は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付の7種類です。通勤災害の給付は、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付の7種類です。

場面業務災害通勤災害
治療療養補償給付療養給付
休業休業補償給付休業給付
障害障害補償給付障害給付
遺族・葬祭遺族補償給付、葬祭料遺族給付、葬祭給付

長く治療が続く場合は、傷病補償年金(通勤災害では傷病年金)に移る仕組みがあります。介護が必要になった場合は、介護補償給付(通勤災害では介護給付)があります。

休業の扱いと待期期間

休業補償給付と休業給付は、療養のため働けず、賃金を受けていない日について支払われます。支給は休業の4日目からで、1日につき給付基礎日額の100分の60が基本です。一部だけ働いた日や、一部の賃金が払われた日は、その日の賃金を差し引いて計算されます。

休業の初日から3日間は「待期期間」と呼ばれ、労災保険からの支給は4日目から始まります。業務災害の場合、この3日間は事業主が休業補償を行う義務があります。労働基準法は、療養中の労働者に平均賃金の100分の60の休業補償を行うよう定めています。この3日分の請求先は事業主です。

注意

ここでの「100分の60」は、休業補償給付そのものの割合です。別の上乗せ(特別支給金)を足した割合は、ここでは書きません。金額の目安にしないでください。

障害、治療が長引くとき

療養を始めてから1年6か月を過ぎても傷病が治らず、障害の程度が省令で定める傷病等級に当たる場合は、傷病補償年金(傷病年金)の対象になります。

障害補償給付(障害給付)は、傷病が治った後に障害が残った場合の給付です。年金や一時金の額、障害等級の表は、ここでは扱いません。

賞与と特別支給金

ボーナスなど3か月を超える期間ごとの賃金は、本体の給付には入らず、特別支給金の一部(障害や遺族、傷病の特別年金など)に反映される仕組みです。

請求できる期限

給付には、請求できる期間があります。2年のものと5年のものがあり、法律では「行使することができる時から」数えるとされています。主な給付の数え方は次のとおりです。

  • 療養(補償)等給付は、療養費を支払った日ごとに、翌日から2年
  • 休業(補償)等給付は、賃金を受けなかった日ごとに、翌日から2年
  • 障害(補償)等給付は、傷病が治った日の翌日から5年
  • 遺族(補償)等年金・一時金は、死亡日の翌日から5年
  • 葬祭料等は、死亡日の翌日から2年
  • 介護(補償)等給付は、介護を受けた月の翌月1日から2年

傷病(補償)等年金は、職権で移行する仕組みのため、請求の時効はありません。

期限は給付ごとに違うため、領収書や日付のわかる書類を残しておくことが大切です。

  • 休業が何日続いたか。最初の3日は待期期間
  • 業務災害の待期の3日分を、事業主に請求したか
  • 治療費を自分で払ったら、払った日ごとに2年の期限がある
  • 賃金が一部でも払われた日は、計算が変わる
  • 障害が残ったら、治った日の翌日から5年の期限がある

給付の内容や計算は、労働基準監督署か、労災保険の相談窓口で確かめてください。この本は制度の仕組みの説明で、個別の請求についての法律の助言ではありません。

第3章

請求は、どこで、どう進める? パートやアルバイトでも?

請求するのは原則としてけがをした本人で、窓口は労働基準監督署です。パートやアルバイトも労災保険の対象です。

この章の要点
  • 労災保険は、正社員、アルバイト、パートタイマーなど名称や働き方にかかわらず適用される。
  • 請求は労働者本人が労働基準監督署に行い、署長が支給か不支給かを決める。事業主の証明が得られない場合でも、請求はできる。
  • 健康保険証で受診してしまった場合は、いったん全額を支払い、後から労災保険に請求できる。請求書は事業場を管轄する労働基準監督署に提出する。

先に結論

労災保険の請求は、原則としてけがをした労働者本人が行います。窓口は、事業場を管轄する労働基準監督署です。請求を受けた署長が、支給するかどうかを決めます。

パート、アルバイト、正社員など、名称や働き方に関係なく、労災保険は適用されます。労災として認められるかどうかは、事業主が決めるものではありません。

会社の証明が得られなくても、請求はできます。

請求の窓口と書類

請求は、事業場を管轄する労働基準監督署に出します。請求書の様式は、厚生労働省のページからダウンロードできます。どの様式を使うかは、業務災害か通勤災害か、どの給付かで変わります。

請求書には、事業主が証明する欄があります。事業主の証明が得られない場合でも、請求はできるとされています。その場合は、労働基準監督署に相談してください。

書類の提出期限や、労働基準監督署での決定までの日数は、ここでは扱いません。窓口で確かめてください。

健康保険証で受診してしまったとき

労災の治療なのに、健康保険証で受診してしまうことがあります。その場合は、いったん医療費の全額を支払い、後から労災保険に請求する方法があります。

大まかな流れは、次のとおりです。加入している健康保険に、労働災害であることを伝え、返納の手続きをします。そのうえで、療養の費用の請求書に事業主と担当医師の証明を受け、領収書を添えて、事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。返納の前でも請求できるとされています。

注意

流れは公式の案内の要約です。細かい手続きは、労働基準監督署か健康保険の窓口で確かめてください。

パートやアルバイトの場合

労災保険は、正社員、アルバイト、パートタイマーなど、名称や働き方に関係なく適用されます。厚生労働省の確かめよう労働条件のQ&Aでは、自宅からアルバイト先に向かう途中で転んだ例が取り上げられています。

そのQ&Aでは、労災の対象になる場合は健康保険を使えないこと、会社の協力が得られないときは労働基準監督署に相談することが説明されています。個別の事故が労災に当たるかは、ここでは判断しません。

困ったときの相談先

制度全般の問い合わせは、労災保険相談ダイヤル(0570-006031。月〜金 8:30〜17:15。祝日・年末年始を除く)が案内されています。請求済みの人は、所轄の労働局や労働基準監督署に照会します。

最寄りの労働基準監督署は、厚生労働省の労働局・労働基準監督署の連絡先ページで探せます。

  • 受診した病院に、労災の治療だと伝えたか。健康保険を使うと、後で返納の手続きが要る
  • 請求書の様式は、業務災害か通勤災害か、どの給付かで決まる。様式は厚生労働省のページで確かめる
  • 会社に事業主の証明を頼み、断られたら、そのまま労働基準監督署に相談する
  • 領収書や診断書など、日付のわかる書類を手元に残す。期限は給付ごとに違う

この本は手続きの仕組みの説明です。個別の請求についての法律の助言ではありません。

体験談や口コミではなく、法令などの公開情報と一般的な進め方をもとに書いています。サービスの内容は変わることがあるので、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。

この先は

書架へ戻って、ほかの本を探す