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退職金と定年の本

六十歳の、分かれ道

退職金にかかる税金の仕組み、65歳までの雇用の決まり、高年齢雇用継続給付。

第1章

退職金の税金は、どう決まる?

退職金には、ふつうの給与とは別の計算があります。控除の式と、申告書を出すかどうかで、税の精算の仕方が変わります。

この章の要点
  • 退職所得は、(収入金額 − 退職所得控除額)× 2分の1 で計算する。
  • 退職所得控除額は、勤続年数が20年以下か20年超かで式が分かれる。1年未満の端数は1年に切り上げる。
  • 退職所得の受給に関する申告書を支払者に出していれば、源泉徴収で原則精算される。出さなければ支払金額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算する。

先に結論

退職金にかかる所得税は、退職所得控除を引いた残りの半分を基にして計算します。受け取るときに源泉徴収される税額は、「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に出しているかどうかで変わります。

退職所得 =(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2

収入金額は、源泉徴収される前の金額です。国税庁の説明では、これが退職所得の基本の式になります。

退職所得控除額の決まり方

控除額は勤続年数で決まります。勤続20年以下と20年超で式が分かれます。

  • 勤続20年以下: 40万円 × 勤続年数(80万円に満たなければ80万円)
  • 勤続20年超: 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数に1年未満の端数があれば、1年に切り上げて数えます。たとえば勤続10年2か月は11年として扱い、控除額は440万円になります。

計算の例

勤続30年の場合は、20年超の式に当てはめて1,500万円になります。読み手の税額を表すものではなく、式の当てはめ方の例です。

申告書を出すかどうかで、精算が変わる

支払者に申告書を出していれば、源泉徴収は原則としてそれで精算されます。確定申告は通常不要です。医療費控除などを受ける場合は別に確定申告が要ります。

申告書を出さない場合は、支払金額の20.42%が源泉徴収されます。そのうえで、確定申告で精算します。

申告書を出した勤続年数・控除額などから税額表で計算して源泉徴収。原則としてこれで精算
申告書を出さない支払金額 × 20.42%(円未満切捨て)を源泉徴収。確定申告で精算

申告書は、退職手当等の支払を受けるときまでに支払者へ出します。税務署ではなく支払者が保管します。同じ年に別の退職金があるときは、その源泉徴収票を添えます。

特別な扱いになる場合

役員としての勤続が5年以下の退職手当等(特定役員退職手当等)は、2分の1を掛けません。役員以外で勤続5年以下の退職手当等(短期退職手当等)は、控除後の額のうち300万円を超える部分に2分の1を掛けません。

注意(時点)

この説明は、国税庁のページの「令和8年4月1日現在の法令等」に基づきます。税額表の数値は年分ごとに更新されます。国税庁の例の金額は、そのページの例です。読み手の税額として当てはめないでください。

改正(令和9年以後)

令和8年度の税制改正により、令和9年以後は防衛特別所得税が加わり、復興特別所得税の税率が引き下げられます。国税庁の説明では、合計税率は変わらず、源泉徴収税額の計算方法も変わらないとされています。

読者が確かめること

  • 勤続年数を数えたか(退職日までの年数。1年未満は切り上げ)
  • 支払者(勤め先)に「退職所得の受給に関する申告書」を出したか。支払を受けるときまでに出す、と案内されています
  • 同じ年に別の退職金がないか(ある場合は源泉徴収票を添付)
  • 勤続5年以下の場合、特定役員退職手当等や短期退職手当等に当たらないか
  • 医療費控除などで確定申告をする予定なら、退職所得も含めて申告が要るか

この章は税の仕組みの説明です。個別の税額や申告の判断は、勤め先の経理・総務の担当者か、税務署で確かめてください。

第2章

定年と、65歳までの雇用は、どう決まっている?

定年は60歳を下回ることができません。65歳まで働ける措置は義務で、70歳までの措置は努力義務です。線の引き方を法律のとおりに分けて見ます。

この章の要点
  • 定年を定めるなら、60歳を下回ることはできない(第8条)。
  • 定年が65歳未満の事業主は、65歳まで働ける措置を1つ講じる義務がある(第9条)。措置は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれか。
  • 70歳までの就業確保措置は努力義務(第10条の2。令和3年4月1日施行)。

先に結論

定年を定めるなら、60歳を下回ることはできません。定年が65歳未満の会社は、65歳まで働ける措置を1つ講じる義務があります。70歳までの就業確保は努力義務で、義務ではありません。

定年は60歳を下回れない。65歳未満の定年なら、65歳までの措置が義務

義務になっている部分

高年齢者雇用安定法は、定年を定める場合に60歳を下回ってはならないと定めています(第8条)。厚生労働省令で定める危険有害業務は例外です。

定年が65歳未満の事業主は、次のいずれかの措置を行う必要があります(第9条)。

  1. 定年の引上げ
  2. 継続雇用制度の導入(希望者全員が対象)
  3. 定年の廃止

継続雇用制度には、グループ会社などの特殊関係事業主との契約による雇用確保も含まれます。

継続雇用の対象者の限定が終わった日

平成25年(2013年)4月1日の改正で、労使協定により継続雇用の対象者を限定できる仕組みは廃止されました。ただし、経過措置は令和7年(2025年)3月31日に終わりました。令和7年4月1日以降は、希望者全員が対象です。

厚生労働省は、この改正について「65歳までの定年引上げが義務になるわけではない」と説明しています。

70歳までは努力義務

70歳までの就業確保措置は、令和3年(2021年)4月1日から施行されています。対象は、定年が65歳以上70歳未満の事業主と、70歳未満までの継続雇用制度を導入している事業主です。

措置は次の5つです。70歳までの定年引上げ、70歳までの継続雇用(他の事業主によるものを含む)、定年の廃止、70歳まで継続的に業務委託契約を結ぶ制度、70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度です。

注意(義務と努力義務)

65歳までの措置は義務です。70歳までの措置は努力義務です。努力義務なので、取り組みは会社によって違います。

再雇用のあとの条件は、この章では扱わない

継続雇用になったあとの賃金、契約期間、仕事の内容は、この章では扱いません。条件は会社の制度と、本人との雇用契約で決まります。就業規則と雇用契約書で確かめてください。

読者が確かめること

  • 自分の会社の定年は何歳か(就業規則で確かめる)
  • 定年後の継続雇用(再雇用)の制度があるか。希望すれば対象になるか
  • 再雇用後の契約期間・賃金・仕事の内容の条件
  • 70歳までの制度があるか(努力義務なので会社によって異なる)
  • 判断に迷うときは、労働局やハローワークの窓口に聞く

この章は法律の仕組みの説明で、個別の労働条件についての助言ではありません。ご自身の会社の扱いは、会社の担当部署や労働局・ハローワークで確かめてください。

第3章

60歳を過ぎて賃金が下がったら、給付はどうなる?

60歳以降に賃金が下がったとき、雇用保険から出る給付があります。令和7年4月1日から、給付率の上限が15%から10%に変わりました。

この章の要点
  • 対象は、60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者で、被保険者期間が5年以上あり、賃金が60歳到達時の75%未満に下がった状態で働いている人。
  • 令和7年4月1日から、給付率の上限が各月の賃金の15%から10%に変わった。
  • 「60歳に達した日」(被保険者期間が5年未満なら5年を満たした日)が令和7年3月31日以前か4月1日以降かで、上限の率が分かれる。

先に結論

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で雇用保険の被保険者だった人が、60歳以降の賃金が下がった状態で働くときに出る給付です。令和7年(2025年)4月1日から、各月の賃金に対する給付率の上限が15%から10%に変わりました。

給付率の上限は、各月の賃金の15%から10%へ(令和7年4月1日から)

対象になる条件

  • 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者であること
  • 被保険者であった期間が5年以上あること
  • 60歳以降の賃金が、60歳到達時の賃金の75%未満に下がった状態で働いていること

率が変わった時期の分け方

上限の率を分けるのは「60歳に達した日」です。被保険者期間が5年未満の場合は、5年を満たした日になります。

  • この日が令和7年3月31日以前なら、各月の賃金の15%が上限
  • この日が令和7年4月1日以降なら、各月の賃金の10%が上限

根拠は「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)です。厚生労働省のページには、別の経過措置は書かれていません。基準日が施行日の前か後かで分かれます。

支給の期間と手続き

支給期間は、60歳に達した月から65歳に達する月までです。被保険者期間が5年未満で60歳を迎えた場合は、5年を満たした月から65歳に達する月までになります。

手続きは、原則として2か月に一度、事業主を通じて、事業所の所在地を管轄するハローワークに支給申請書を出します。

各月の賃金が上限額を超えると、その月は支給されません。上限額は毎年8月1日に改定されます。この章では金額を載せていません。

注意(時点)

情報は、厚生労働省とハローワークのページを2026年10月14日に確かめた内容です。ハローワーク側のページには掲載日・更新日の記載がありません。上限額は毎年8月1日に変わります。

給付の額は、早見表で確かめる

給付の額は、60歳時点の賃金と、今の賃金の比で決まります。率の閾値の細かい数字は、公式の支給率早見表で確かめてください。この章では、もらえる額を試算しません。

老齢厚生年金との関係は、この章では扱いません。年金の扱いは、この本では確かめていません。

読者が確かめること

  • 60歳に達した日(被保険者期間が5年未満なら5年を満たした日)はいつか。令和7年3月31日以前か、4月1日以降か
  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上あるか
  • 60歳時点の賃金と今の賃金の比を、公式の早見表で確かめる
  • 申請は事業主を通じて、管轄のハローワークで行う(会社の担当者に確認)
  • 賃金が、毎年8月1日に改定される上限額を超えていないか

この章は制度の仕組みの説明で、受給できるかどうかや額の判断ではありません。ご自身の場合は、会社の担当者か、管轄のハローワークで確かめてください。

体験談や口コミではなく、法令などの公開情報と一般的な進め方をもとに書いています。サービスの内容は変わることがあるので、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。

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