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テレワークの本

家が、職場になる日

テレワークの労働時間の数え方と中抜け、通信費などの費用負担、家でのけがと労災。

第1章

家で働くと、時間はどう数える? 中抜けは?

在宅でも、労働時間の決まりは基本的に同じです。時間の数え方と、席を外した時間の扱いを、ガイドラインの記載に沿って整理します。

この章の要点
  • 在宅でも、労働基準関係法令は適用される。時間外・休日労働には三六協定と割増賃金、深夜労働には深夜割増賃金が必要。
  • 労働時間は、パソコンの使用時間などの客観的な記録、または労働者の自己申告で把握する方法が考えられる。
  • 中抜け時間は、把握してもしなくてもよい。把握する場合は休憩時間か時間単位の年次有給休暇として扱う例、把握しない場合は始業から終業までを労働時間として扱う例が示されている。

先に結論

在宅勤務でも、労働基準法などの労働基準関係法令は適用されます。労働時間をどう数えるかは、オフィス勤務と同じ法律の枠の中で決まります。

在宅だからといって、労働時間の決まりが外れるわけではありません。

厚生労働省のガイドライン(令和3年3月改定)は、テレワークの導入と実施の考え方を示したものです。法律そのものではなく、書かれていることの多くは「望ましい」という形です。

労働時間は、どう把握する?

ガイドラインは、始業と終業の時刻を確かめる方法として二つを挙げています。パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録で確かめる方法と、労働者の自己申告による方法です。

自己申告で把握する場合について、ガイドラインは次のように書いています。

  • 使用者が実態を記録し、適正に申告することを労働者に十分説明すること
  • パソコンの使用状況と申告の内容に著しい違いがあれば、補正すること
  • 自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、申告を妨げる措置を講じてはならないこと

中抜けの時間は、どう扱う?

中抜けとは、仕事の途中で一定の時間、業務から離れることです。概要リーフレットは、中抜け時間の扱いを次のように示しています。

労働基準法上、使用者は中抜け時間を把握しても、把握せずに始業と終業の時刻だけを把握してもよいとされています。把握する場合の取り扱い例は、休憩時間として終業時刻を繰り下げる方法や、時間単位の年次有給休暇として扱う方法です。把握しない場合は、始業と終業の間から休憩時間を除いたものを労働時間として扱う例が示されています。

注意

これらは「例示」であり、法律で一つに決められているものではありません。どの扱いにするかは、会社の就業規則や社内ルールで確かめてください。「在宅だから休憩になる」と決まっているわけではありません。

フレックスタイムと移動時間

フレックスタイム制では、中抜けの時間を労働者自身の判断で、その分だけ終業時刻を遅くするなどして調整できるとされています。清算期間内の他の労働日で調整する方法も示されています。

勤務の一部をテレワークにする日に、就業場所の間を移動する時間は、移動中の時間を自由に使えることが保障されていれば、休憩時間として扱うことが考えられます。一方、会社が急にオフィス出勤を命じるなど、自由に使えることが保障されない移動は労働時間になります。

時間外・深夜の割増賃金

テレワークでも、時間外・休日労働には三六協定の締結と届出、割増賃金が必要です。深夜労働には深夜割増賃金が必要です。在宅だからといって、この扱いが変わるわけではありません。

ガイドラインは、長時間労働を防ぐ取り組みの例として、時間外・休日・深夜のメール送付を抑えること、システムへのアクセスを制限すること、時間外労働の手続きを明示することなどを挙げています。

みなし労働時間制を使う場合

事業場外みなし労働時間制は、テレワークでも適用できる場合があります。概要リーフレットによると、情報通信機器が使用者の指示で常時通信可能な状態に置かれていないこと、そして随時、使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと、の両方を満たすときに適用できるとされています。

使えるかどうかは、個別の勤務の実態で判断されます。ここでは、ガイドラインに書かれた条件だけを示しています。

読者が確かめること

  • 会社の労働時間の記録方法(パソコンの記録、勤怠システム、自己申告のどれか)
  • 就業規則・社内ルールで、中抜けを休憩、時間単位年休、労働時間のどれとして扱うと決めているか
  • 自分の労働時間制度(通常、変形、フレックス、みなし)
  • 時間外のチャットやメールに対応する決まりがあるか

ここは法律の助言ではなく、仕組みの説明です。具体的な扱いは、会社の就業規則で確かめてください。迷うときは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。

第2章

家の通信費や電気代は、誰が払う?

在宅勤務の費用を誰がどれだけ払うかは、企業ごとに違います。ガイドラインが勧めているのは、払い方を先に話し合い、ルールとして書いておくことです。

この章の要点
  • 費用負担は企業ごとに異なるため、誰がどの費用を負担するか、会社負担の限度額、請求の方法を、あらかじめ労使で話し合い、就業規則等に規定しておくことが望ましい。
  • 労働者に情報通信機器や作業用品などの負担をさせる定めをするときは、就業規則に規定しなければならない(労働基準法第89条第5号)。
  • 通信費や電気料金の増加分は、業務に要した実費を在宅勤務の実態を踏まえて合理的・客観的に計算して支給することも考えられる。

先に結論

在宅勤務で増える通信費や電気代を、会社と社員のどちらが払うか。ガイドラインは、費用の扱いは企業ごとに異なるとしています。そのため、金額や割合を一律に示してはいません。

ガイドラインが望ましいとしているのは、あらかじめ話し合い、就業規則などに書いておくことです。

決めるときに話し合う項目

ガイドラインは、テレワークによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくないとしています。費用の扱いは、物品の貸与の状況などで様々です。そのため、次の点をあらかじめ労使で話し合うことが望ましいとされています。

  • 誰が、どの費用を負担するか
  • 会社が負担する場合の限度額
  • 請求の方法

話し合った結果は、就業規則などに規定しておくことが望ましいとされています。

社員に負担させるなら、就業規則に書く

労働者に情報通信機器や作業用品などの負担をさせる定めをする場合は、就業規則に規定しなければなりません。これは労働基準法第89条第5号が定める義務です。

望ましいことと義務の違い

費用を話し合って決めることは、ガイドラインが「望ましい」と書いている内容です。就業規則への規定は、社員に負担させる定めをする場合に法律で求められている義務です。

実費で支給する考え方

在宅勤務で、個人契約の電話回線を使うために通話料やインターネットの利用料が増えることがあります。自宅の電気料金が増える場合もあります。

こうした増加分について、業務に要した実費を、合理的・客観的に計算して支給することも考えられるとされています。

通信回線の使用料は、個人の使用と業務の使用を分けるのが難しいため、一定額を会社が負担している例も見られます。

注意

公式の資料には、金額の相場は示されていません。この本でも金額は書きません。費用の金額や条件は、会社の規程で確かめてください。

費用の扱い方の例

確かめよう労働条件(厚生労働省)に挙げられている例を、表にまとめます。どの例を採るかは会社によって違います。

費用公式ページに挙げられている例
情報通信機器会社が貸与することが多い
通信回線一定額を会社が負担する例がある
文具・郵送料立替えて精算するルールにする例がある
水道光熱費テレワーク手当に含める例がある

勤務場所を広げるとき

労働契約や就業規則で決めた勤務場所の範囲を超えて、テレワークをさせる場合は、労働者本人の合意を得たうえで労働契約を変更することが必要とされています。

読者が確かめること

  • 就業規則・社内規程に、在宅勤務の費用の項目があるか
  • パソコン、モニター、回線は会社の貸与か、自分で用意するものか
  • 通信費や光熱費の手当が出るか。出る場合の金額と条件は会社の規程で確かめる
  • 立替えが出たときの請求の方法

費用の負担でトラブルになったときは、総合労働相談コーナーに相談できます。無料で、予約は不要、秘密は守られると案内されています。電話相談の曜日や時間は、ガイドラインの概要リーフレットで確かめてください。

第3章

家でけがをしたら、労災になる?

在宅でも、仕事の中で起きたけがは、労災保険の対象になるとガイドラインは示しています。対象かどうかの線の引き方と、残しておく記録を並べます。

この章の要点
  • 労働契約に基づき事業主の支配下にあることによって生じたテレワーク中の災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象になる。
  • 私的行為など業務以外が原因のものは、業務上の災害とは認められない。
  • 使用者は機器の使用状況などの客観的な記録と、労働者から申告された時間の記録を適切に保存する。労働者は災害の発生状況などを、可能な限り記録しておくことが望ましい。

先に結論

在宅勤務中のけがが労災の対象になるかどうかは、会社の支配下で起きた仕事上の災害かどうかで考えます。ガイドラインはこの考え方を示しています。

自宅で起きたかどうかだけで、対象かどうかが決まるわけではありません。

ガイドラインは法律ではなく、考え方と例示を示した資料です。個別のけがについての判断は、窓口に相談してください。

対象になるもの、ならないもの

労働基準法に基づき、使用者は労働災害の補償責任を負います。そのため、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークでの災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象になるとされています。

一方で、私的行為など業務以外が原因のけがは、業務上の災害とは認められないとされています。

注意

どのけがが業務上にあたるかは、個別の事情で判断されます。休憩中、中抜け中、家事の最中のけがについて、この本では具体例を挙げていません。個別の判断は、労働基準監督署に相談してください。

記録しておくこと

ガイドラインは、記録の備えについて二つの立場を示しています。会社は、情報通信機器の使用状況などの客観的な記録と、労働者から申告された時間の記録を、適切に保存します。

労働者は、けがをしたときの災害の発生状況などを、会社や医療機関などが正確に把握できるよう、可能な限り記録しておくことが望ましいとされています。何時ごろ、どこで、何をしていたかを、そのときのうちに書き残しておく形が考えられます。

作業環境の確認

ガイドラインには、自宅などの作業環境を確かめるための労働者用チェックリストがあります。作業スペース、机・椅子・ディスプレイの配置、整理整頓、事故防止の措置などの項目が並んでいます。チェックリストは、令和3年3月改定のガイドラインの別紙です。

困ったときの相談先

テレワーク中のけがについては、労働基準監督署に相談できます。概要リーフレットには、仕事中のけがや通勤途中のけがなどを受け付けていると載っています。

上司などが心身の変化に気づきにくい状況になりやすいため、健康相談の体制を確かめておくことが呼びかけられています。心の不調の相談窓口として「こころの耳」が案内されています。

読者が確かめること

  • 勤務時間(始業・終業)を会社が記録できる状態か。自分でも記録を残しているか
  • 自宅の作業環境が、チェックリストの項目に沿っているか
  • けがをしたら、発生の状況をすぐに書き残す
  • 会社の連絡体制と、緊急時の連絡先

ここは法律の助言ではなく、仕組みの説明です。会社の就業規則や、労働基準監督署などの窓口で確かめてください。

体験談や口コミではなく、法令などの公開情報と一般的な進め方をもとに書いています。サービスの内容は変わることがあるので、申込みの前に各社の公式ページで確かめてください。

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